セリーグとパリーグ比較「バントが少なく盗塁と死球が多い、パの強さを生み出す攻撃的姿勢とは」 |
「私はこの記事には同意しかねます。
むしろ、今シーズンのパシフィック各チームのリリーバーの充実がこういった現象を招いているのではないかと思います。ようするに、チマチマ点を取っても同点や一点差くらいでは質の良いリリーフが出てきて、流れを変えられる可能性があるので、序盤で積極的に攻めていく姿勢を見せているのではないでしょうか。犠打が減り、死球が増えるのはその駆け引きの結果なのかと。
セパのホールドポイント上位10人+セーブ上位5人(セーブは多くするとイニング数が合わないので)の被安打を比べると、
セHP上位10人-345被安打、セSV上位5人-156被安打=501被安打
パHP上位10人-310被安打、パSV上位5人-116被安打=426被安打
つまり、パの方が後ろに良い投手が多く、終盤になるとよりチャンスが少なくなるので、序盤から積極的に仕掛けてリードを目論むケースが多いのではないかと思っております。」
今シーズンが始まってから、こちらではなくfacebookのページで野球について投稿をしている。そのページで冒頭で添付したNumberの小関氏のコラムに関して、「判り易い」とコメントしたところ、「通」のN氏(鷹党)から鋭い反論が来た。これについて、改めてコラムを読み返し、その上で昨日議論した。途中で退席したが、同じく「通」のM氏(竜党)の意見も少しもらった。
まず共有できた認識として、「小関氏にしては、やや分析が甘い」という点。この点、確かにNさんの指摘のとおりで、「セが細かく、パが豪快」というイメージをメディアが強調していることに影響されているのではないかと。
「攻撃精神を表すチーム記録を、セとパで比較してみよう。犠打(バント)と死球の数は攻撃的精神をよく表していると思う。まず犠打はセの451に対してパは348。死球はパの214に対してセは151。パは犠打が少ない分、走者を次に進める手段を盗塁に求める傾向がある。盗塁をくらべるとセの277に対してパは346とやはり多い。ここまでに挙げた各種記録を以下にまとめてみよう。
・犠打……セ451>パ348
・盗塁……セ277<パ346
・死球……セ151<パ214
両リーグの攻撃的精神の差がひと目でわかると思う。これがテレビの前の視聴者や球場で観戦するファンの目にどう映るかは言うまでもない。「激しい野球のパ・リーグ、ぬるい野球のセ・リーグ」――そんなふうに映るのではないだろうか」
まず、「攻撃精神」ってなんだ?定義が不明。「犠打と四球の数は攻撃的精神をよく表している」って、よくわからない。
激しい野球のパリーグ、ぬるい野球のセリーグ、って。決めつけていいの?
「パの野球は、アマチュア野球にも影響を与え始めている。7月18日から始まっている都市対抗では打順の上位、下位に関係なく、豪快な空振りが目についた。これはパの柳田悠岐(ソフトバンク)や森友哉(西武)が猛威を振るっているバッティングスタイルそのものである。 また、甲子園の大阪府予選2回戦で激突した大阪桐蔭と履正社の試合(大阪桐蔭が5対1で勝つ)でも、履正社の初球ヒッティングが非常に目立った。5回までに初球打ちを敢行した打者が7人(バントを除く)。 プロでも初球ヒッティングは1シーズンに100回以上記録する選手は少ないが、浅村栄斗(西武)は2013年、112回(打数)もの数を記録している。もちろん、パ・リーグに顕著な例と言っていい。この初球ヒッティングについて聞くと、岡田龍生・履正社監督は「甘い球がくる確率は早いカウントほど高いでしょ」と笑った。」
都市対抗の各打者のスイングの速さは確かだ。でもそれってパの野球が与えた影響かどうかわからない。柳田と森のフルスイングは特徴的だが、筒香だって平田だって、阿部慎之助だってフルスイングしている。初球ヒッティングに関するデータが取れないので何とも言えないが、ジャイアンツで言えば長野の初球打ちは目立つし、由伸だって代打の折は結構初球から振っているイメージがある。カープ菊池やベイ梶谷も結構早打ちだ。ベイやスワローズの打線を攻撃的ではないとは思えない。
一つ言えるのはDHの存在の有無。9番投手の存在で一息つける(特に序盤~中盤)だけに先発投手が有力なケースではロースコアになりがちで、すると一点勝負になるから先取点が重い。菅野・マエケンのマッチアップがいい例で、常にロースコアゲームになるため一点はどうしても先に欲しくなる。ただ、その場合でもセで盗塁が少ないのは「ぬるい」のではなく、牽制が上手いということに起因すると思う。パで盗塁王を複数回取った片岡がインタビューで「セの投手の方が牽制が上手い」と語っていた記憶がある。従って「走りたいが走れない」のでは。菅野・マエケンが投げ合った最初の二試合(ズムスタと宇都宮清原)で、二番菊池がバスターエンドランを仕掛けたのは、一死二塁でも点が取れる可能性が高くないことを踏まえての戦略ではなかったか。
東大野球部が四位を取った頃。当時のキャッチャーに話を聞いたことがある。送りバントは極力回避していたそうだ。無駄に一死を与えるからで、ではなぜ無駄なのかというと、得点圏にランナーが行くと甲子園にも出ていたバリバリの投手のスイッチが入るからだそうだ。だから、一塁にランナーが出るとともかく振り抜き、外野の間を抜く当たりを狙う。二死一塁なんか典型で、相手投手はその展開だと力を抜く。そこが狙い目。もう一つは、1-0で勝つ投手力がなかったからだ、と言っていた。
この「弱者の戦略」は面白い。東大の場合はそのパターンが通用しなくなって連敗が続いているようだが、この作戦を逆に読むと、送りバントをするのは投手力に自信があるチーム、ということになる。だから菅野・マエケンや、黒田・メッセンジャーといった組み合わせの場合の序盤に送るのは意味がある。決してぬるいからではない。
ただ、内角を攻めるかどうかについては議論が分かれる。投手の持ち球が何かにもよる。好調時の高木勇人はカットボールとシュート、内角へのスローカーブの配球が奏功していた。
N氏の指摘は必聴に値する。ブルペンの被打率がパの方が好成績。序盤にリードを広げたい。一点では足りない。そんなベンチの考えがあるのではと。だから送りバントが少ない、と。なるほど。一方、今年のセは、オスンファンのWHIPは悪化し、澤村も劇場好き、カープは日替わり守護神、ポスト岩瀬の福谷も今一つ・・・と、バーネットと山崎くらいしか信頼に足るクローザーがいないという状況で、では有力なセットアッパー・クローザーが揃っているチームだったらどうだろうか、という分析をやってみると面白いかも。直感的に、ジャイアンツは昔から結構送りバントは多かったように記憶している。
「パの死球の多さは、投手が打者から日常的に受けているプレッシャーが半端でない現実を思い知らせる。そのプレッシャーをはねのけようという気持ちが内角攻めに現れている。」と小関氏は書いている。これはDHがあることで首肯できる主張だ。が、プレッシャーというのはメンタルなもので、それと配球は別物、とも言える。
この問題提起、なかなか結論が出ない。いろいろな人の意見を聴いてみたい。